ネグローニが目指す再生と循環
私たちは年間1000足を超えるソールレストアのプロセスによって生産した商品をもう一度再生し、美しい状態でオーナーの元に返しています。
これは、ファクトリーブランドであるネグローニの大切なミッションであり、常にリジェネラティヴな精神でありたいと思う、私たちのブランド哲学でもあります。
ネグローニの修理はプロダクションラインと同じ工程を通り、ハンドメイドで仕上げられる。
購入した商品を修理をしながら長く大切に使っていただいているお客様一人一人の意識の高さに、私たちはいつも深い感銘を受けています。
購入したスニーカーを廃棄することなく、ソール交換修理をしながら長く丁寧に使うことで、「再生と循環」という次世代型のプロダクトサイクルを実現することができるからです。
ウェルビーイングとの乖離
しかしながら、独自の自社ファクトリーを持つ私たちにとっては当たり前の考え方は、今までの靴製造業界にとってはごくマイノリティーであるという視点もあります。大規模な生産と消費を繰り返してきた旧来のシューズプロダクションにおいては、私たちの製造・修理に対する手法と考え方はあまりにも非効率的だと捉えられています。
アパレルや靴のビジネスモデルでは常識とも言える「毎シーズンごとに大量の商品を製造して、市場に投入し、売れなければ処分・廃棄する…」といった考え方に、私たちはいつも違和感を覚えていました。「再生と循環」を考えることなく生産と消費の上書きを続けていくだけでは、いつしか歪みが生まれ、サイクルは崩れてしまいます。
その上、廃棄されるものは製造される商品だけではありません。デザインごとに発生する大量の金属刃型やプラスチック木型に加え、ソールや革を始めとする資材などは一度市場への投入が止まってしまうと行き場を失ってしまい、大量の廃棄物を生み出します。その上、なぜか廃棄の責任は、発注元やブランドではなく製造を受託したメーカーの負担となることがほとんどです。
これは、健全な経済活動の中で環境負荷を低減し、責任あるものづくりを推進すべきという世界的な潮流から大きく乖離していると感じます。ネグローニは例えマイノリティーな立場だとしても、プロダクトの「再生と循環」を通じてユーザーの皆様とものづくりの未来像を共創していきたいと考えます。
上手く継続するための仕組みづくり
ネグローニは、一度企画した商品を責任を持ってなるべく長く作り続けるようにしています。なぜなら、プロダクトの良し悪しは、1シーズンでは決して測ることができるものではないと分かっているからです。これは、コンティニュエーション(継続) や アップデート (更新)という、クルマ文化の在り方から影響を受けたネグローニ独自の製造コンセプトに通じています。たとえ発売から10年以上経過していたとしても、可能な限り作り続ける・無駄にしないということは、製造者の倫理的にはごく当たり前のことにも思えますが、時代に合わせて継続のサイクルを作り続けることは決して簡単なことではありません。
年月の経過とともに資材が入手できなくなってしまうことさえなければ、ほとんどの商品を再生・復刻させることができることも、ネグローニの強みと言えます。一過性の市場の動向にとらわれず、素材を吟味して丁寧なものづくりを続けることで、無駄な廃棄物を減らし、良い循環のサイクルを回すことができるのです。
ネグローニで20年以上に渡り使用されているイタリア製のラバーソール。現在はブランドロゴの刻印が入る。
ポジティブな業界を目指して
旧来のシューズプロダクションも、2020年のCovid-19の流行によって大きく淘汰され、少しづつ方向を転換していく動きも感じています。経済性と社会性を両立しようとする環境意識の高い企業が増えて、未来に向けたサービスの提供が増えてきたように思えます。
ネグローニは次の目標として再生可能なアップサイクル素材を使用したラバーソールへの移行を検討するなど、今まで以上に環境に配慮した素材を使う取り組みの検討を海外企業と共に始めています。ブランドとマテリアルメーカー、製造工場が共にしっかりとしたヴィジョンを掲げ、共に社会の問題意識を共有することで、ネグローニが理想とする「再生と循環」を目指していくことができるはずです。